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ようやく秋の訪れを感じたかと思えば、その秋も徐々に深まりをみせ、街路樹も色づく季節。遠くの山並みも紅葉を迎えつつある。と云う訳で、去る11月13日(日)、知り合いのカウンセラーの紹介で、森林セラピーと云うものに参加してきた。神戸から箕面の森へ。既に、森は紅葉を迎えていた。

森林セラピー、その名の響きからすれば森林浴の様なものを想像するが、主催する 「NPO法人みのお山麓保全委員会」 のホームページでは次の様に説明されている。 森林の中に身を置き、ゆっくり散策したり、レクリエーション等のプログラムを行う事によって、”こころ”と”からだ”のバランスがとれるようにお手伝いします。その結果、免疫機能が向上し、病気になりにくい身体になるという、予防医学的見地に立ったセラピーです あるいは 科学的・医学的に裏付けされた森林浴効果を言います。森林環境・地形を利用して心と身体との健康維持・増進をはかり、疾病予防・ストレス軽減を目指します。森林と触れ合うことによる主観的で内的な体験は、心と身体に大きく働きかけます とも。

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当日は天気にも恵まれ、澄み渡る秋空のもと、森林を彷徨い歩き、深く呼吸をすると、確かに日々の喧騒を忘れ、森の空気に身体が浄化されるような気分にもなる。プログラムに従い、眼を閉じて耳を澄ませば、風にゆれる葉の音、小鳥のさえずり、小川のせせらぎ……静かなようで森には無数な音がある事に気づく。これらはランプの灯火や炎と同じように 「1/fのゆらぎ」 と呼ばれる波長をもつ。人の心を癒さずにはおかないのも頷ける。

そして、そうしていると、自分が自律した独立・孤立の存在なのではなく、実は自分も、自然の一部として存在しているのだ、と実感されもする。よく自然のなかにいると、自分の悩みなど小さなものだと感じられると云うが、それはこんな感覚なのかもしれない。あるいはまた、人は良き話し相手に語るとき、その苦しい感情や悩みを分かち持たれる訳であるが、ここでは 「自然」 に、「森」 に、そうしたものが分かたれるのかも知れない。

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とは云え、僕の立場からすれば、これはリラクゼーションであることには変わりはない。セラピーの効果として、免疫力向上、抗がん能力向上、日常生活の活気向上、緊張・不安・抑鬱低下、リラックス効果etc.を掲げ、「科学的・医学的に裏付けされた森林浴効果」 と謳う以上は、そのエビデンスも気になるところ。みのお森のセラピーでは、この検証に、面白い指標が使われていたので紹介したい。

それは 「唾液アミラーゼ」 と云うストレースマーカーであり、唾液に含まれる生化学物質である。不快な刺激に対しては唾液アミラーゼ活性が上昇し、快適な刺激に対しては逆に低下すると云われる。無論、これは交感神経の興奮/鎮静に呼応する訳である。つまり唾液アミラーゼの分泌によってストレスの感じ方を測定すると云うものだ。僕の場合、セラピーの前と後で、唾液中アミラーゼは、65KIU/L⇒25KIU/L、と変化した。61以上は非常にストレスを感じているとされ、30以下はほどんどストレスを感じていないとされている。この指標でみる限りは、かなりの効果があったと云うことになる。(もちろん測定した指標はこれだけではないが)。

まあ、そんな理屈っぽいことはともかくとして、森の息吹を感じながらの 「呼吸法」 を中心としたセラピーには、かなりの 「癒された感」 を得たのは間違いない。秋の1日、貴重な体験だったと思う。


<参考>
みのお山なみネット(NPO法人みのお山麓保全委員会)
みのお森のセラピー