アサーション_20160318

さて、それでは「アサーショント・レーニング」 を読み始めてみましょう。

「第1章 アサーションとは」

その題名の通り、まずアサーションの定義が示されます。それは「自他尊重のコミュニケーション」であると云う事に尽きます。つまり I am OK. & You are OK. の交流だと云うことです。自らの思いも適切に表現するが、相手の思いにも配慮がなされ、互いに満足のいく妥協点を見い出していく。この様に、相手も自分も尊重するコミュニケーション、自己表現、がアサーションだと云えます。ただ、これだけでは何のことだが良く判りません。

そこで、まず最初に、人間関係の在り方、あるいは自己表現の仕方を3つのタイプに分類して、アサーションについての説明がなされます。その3つのタイプとは、

・非主張的

自分よりも他者を優先し自分の事を後回しにするタイプ。

・攻撃的

自分の事だけを考えて他者を踏みにじるタイプ。

・アサーティブ :

自分の事をまず考えるが他者にも配慮するタイプ。


幾つかの例が示されているのですが、好みでひとつを取り上げると[友人との間で] の出来事。大学生のSさんは気立ても良く真面目で学業も優秀。そんな彼女が学期末試験が迫ったある日、友人のN君からノートがなくて困っているので貸して欲しいと頼まれる。が、Sさんはちょうどその科目を家で勉強しようと思っていたところだった。そんな事例です。このケースでSさんの自己表現を、先の3つのタイプで考えてみます。

・非主張的 : 計画が潰れる不安を無理に押し殺して、N君に同情してノートを貸し、勉強出来ないのを悔やみつつ漫然と過ごす。

・攻撃的 : こんな時期にノートを借りようとするN君の非常識さと普段の怠惰を詰り断るも、罪悪感で勉強が手に着かない。N君も傷つく。

・アサーティブ : 事情を説明し丁寧かつ明確に貸せない事を告げ、次からは早く云ってくれれば貸す事が出来ると提案する。互いに納得。

概ねこの様な感じとなり「自他尊重のコミュニケーション」 はアサーティブタイプだと云うことになります。それぞれについて見てみると、【非主張的 自己表現】 は、自分にも相手にも不正直です。同情しつつも、恨みがましい、恩着せがましい、気持ちを持ったり、自己主張できない自分を情けなく思ったり、卑屈な気分になったりもするでしょう。しかも相手は快く貸してくれたと思っているので、そんなSさんの気持ちも伝わりません。一方で、 【攻撃的 自己表現】 は、自分の意志を明確に主張していますが、相手の気持ちを軽視した強引な自己主張です。相手の気分を害したり、恨みを買ったり、また思い通りになり満足感はあるでしょうが、強引さ故に内心の後味の悪さもあるでしょう。それらに対して 【アサーティブな自己表現】。相手に配慮しつつも、自分の意志を適切に説明し、更には次回への提案もしている。つまり 「自他尊重のコミュニケーション」 とだといえるでしょう。

心地良い人間関係を築き、対人関係でのストレスを軽減するには、このようなアサーティブな自己表現を心掛けるのが有効です。とは云え、多くの人は「特定の人との関係」や「特定の状況において」アサーションが出来なくなることも多いのではないでしょうか。その背景には、その人の習慣化された行動パタンがあり、更にその背景には、その人の価値観や思い込みがある、と平木(2009)は指摘します。まずは自分の傾向に気づき、意識的になることで修正のチャンスが生まれるとています。そして、そうした非合理的な思い込みについての詳細は後に語られることになります。

ところで、そうではなく、どんな場面であっても、非主張的であったり、攻撃的であったりする人のケースにも言及されています。 【全般的に非主張的】な人は、自己否定的で、自尊心が低く、いつも不安で、緊張に満ちた生活を送っています 一方で 【全般的に攻撃的】 な人は、その自信に満ちた態度や強引な物云いとは裏腹に、常に自分の優位を保たないと安心できないので 人の批判や反応をひどく気にし、きわめて敏感です 両者とも 表現方法は全く違って見えますが、心の奥では同じ不安定な気持ちを味わっているでしょう(平木,2009) と述べています。ありのままの自分を見詰めたり、対人認知の面での援助を受ける必要があるとしています。

さて、ではどうしてアサーティブになるのが難しいのでしょうか?
この事に触れて、第1章は締め括られています。

・気持ちが把握できていない

自分の云いたいこと、自分の気持ち、がはっきりと掴めていないケース。例えば、幼児期からの親との関係のなかで否認され抑圧された気持ちなどは自分で把握できていないので表現も出来ないなど。

・結果や周囲を気にし過ぎすぎる。

上手く伝わらない失敗に気をとられているケース。伝わるかどうかは相手次第であり、むしろ相手を尊重し、同時に自分の気持ちを適切に表現する事が大切です。

・基本的人権を使っていない。

アサーションは基本的人権であり、それは自分にも相手にも存在します。相手の権利を尊重するあまり自分にもその権利がある事を忘れている場合。

・考え方がアサーティブでない。

非合理的な思い込みがアサーションを阻害しているケース。この非合理的な思い込みについては、後に詳しく見ることになります。

・アサーションのスキルを習得していない。

アサーションのスキルを持っていない場合。親をはじめとする身近な人達でアサーティブな交流を観察学習する機会がなかったことによります。ですが、スキルである以上は後からも学習できます。

・からだが語るアサーション

言葉で云っていることよりも、行動が非アサーティブな自己表現をしてしまっている場合。

さて、この様にして、アサーションの難しさが出揃ったところで、次章からそれぞれについて詳しく語られて行くことになります。

まずこの章では【非主張的自己表現】【攻撃的自己表現】【アサーティブな自己表現】と云った3種類の自己表現があり、【アサーティブな自己表現】こそが「自他尊重のコミュニケーション」であり、心地良い対人関係に寄与するものだ、と認識できれば良いのではないでしょうか?

アサーション

【文献】
平木典子(2009) 「改訂版 アサーション・トレーニング 」 日本・精神技術研究所


カウンセリング ← クリックでの応援をお願い申し上げます。