アサーション_20160330

心地の良い対人関係を築くための適切な自己表現の仕方を考えてみる、と云うことで「対話の豆知識」では、そのひとつとして「アサーション」を取り上げ、皆さんと一緒に「改訂版 アサーション・トレーニング」を読み始めました。前回の「第3章 考え方をアサーティブにする」では、アサーションを妨げる「非合理的信念(イラショナル・ビリーフ)」について確認し、その代表的なものが、

・誰からも愛され、受け入れられるようであらねばならない。
・常に完全を期すべきで失敗をしてはならない。
・思い通りに事が運ばないのは致命的なことだ。
・人を傷つけるのはよくない。だから人を傷つけるような人は責められるべきである。
・危険で恐怖を起こさせるようなものに向かうと、不安で何もできなくなるのは当然だ。

と云う5つの信念でした。これらの信念に捉われるとき、人は外界からの刺激(出来事)に対してネガティブな感情を抱き、自己表現も不適切なものとなっていきます。平木(2009)は A.エリス の「ABCD理論」 を援用しつつ、こうした「非合理的信念」を「合理的信念」に書き換えていくことが、アサーティブな表現に繋がるとしています。

ところで、先に平木(2009)は、アサーティブになるのを妨げる6つの要因をあげています。その4つめが前回の「考え方がアサーティブでない」でした。今回の「第4章 アサーティブな表現」は、アサーションを妨げる要因の5つめ 「アサーションのスキルを習得していない」 に対応しています。

この章では「人と異なった意見や感じを言えない」「権威者や自分に影響力を持つ人間と自然に会話ができない」「援助や依頼を断れない」「押し売りを断れない」など、私達の日常的なコミュニケーションの悩みを指摘したうえで アサーションとは簡単にいうと、私たちが思っていることや、感じていることを、どの様に表現するかということです(平木,2009)と説明し私たちはある場面や状況に出会ったとき、どのような言葉を使い、どのような表現法すれば、そこで自分の欲求がみたされるか、といった必要に迫られて言い方を学んでいくのであり、つまり学ぶ機会が与えられる必要があるということですと述べています。ここでは様々なレベルでの自己表現の仕方が語られますが、最も重要なのは後述の「DESC法」 です。

第4章 アサーティブな表現 ~言語表現の二つの場面(前編)~


日常会話におけるアサーション ~メンテナンスのために~

日常会話のためのアサーションを、平木(2009)はメンテナンス(=関係維持)のアサーションと呼びます。人間関係をつくり、維持することです。したがってその内容は、安全や健康や伝え合い、心地良い関係をつくろうとするものが主となります(平木,2009)。各種のパーティー会場や食卓など、会話を進める司会者もいないし、話題も決まっていないような、社交的な会話が求められる場面です。

(1) 会話を始め、会話に加わるには
「挨拶する」「自己紹介する」「相手の名前を呼ぶ」「質問をする」「自分の意見を言う」「話をする」と云った、ごく当たり前とも思えるものが挙げられていますが、ここで私が特に重要だと思うのは「質問をする」です。平木(2009)はこのことに関して 質問は、自分の関心のあること、訊きたいことをまず考え、次に相手が得意なこと、興味をもっていること、について投げ掛けることです。質問には、必ず答えが返ってくるという特徴があります。したがって、会話が続きやすく、初期の会話では安全でもありますと述べています。また以前「対話の豆知識」に書いた「と、おっしゃいますと?」と云う質問も有効ですし、また「相手の名前を呼ぶ」に関しては「挨拶にひと言添えて」も参考になると思います。

(2) 会話を続けていくには
「話の内容に変化を加える」「話題を変える」。社交的な会話を続けるコツは話がリフレッシュされるように気をつける事だと云います。同じテーマであっても、ひとつの方向性に拘らず、反対の方向にも、多方向にも、拡がって良いのです。また、話題やテーマについても、拘ることなく変わって行って構いません。「話は変わりますが」「それはそうと」と、合図を入れれば、なお相手は話題に入りやすいでしょう。

(3) 会話を終えるには
『「それではこれで」「先がありますので」などの合図でひとまず会話をきる』「丁寧に別れの言葉を告げる」「関係を繋ぎたい時はその気持ちを言語化する」「グズグズせずにサッとその場を離れる」。自分から会話を切って、その場を離れてしまうと、これで関係が切れてしまうのではないか、と心配な気持ちも働くものですが、それならそれを言葉にして別れれば良いと云うことが語られています。「またお会いしましょう」「時間がなくて残念ですが」「今日のところはこれで」などなど、関係を繋ぐ言葉を添えて、別れの言葉を言えばいいのです(平木,2009)。


こうした日常会話におけるアサーションの他に、言語表現の場面には、もうひとつ 「課題達成・問題解決」 を図る場面と云うものもあります。平木(2009)はそれを「課題達成・問題解決のためのアサーション」と呼んでいますが、これについてはまた次回に譲ることに致します。あわせて先に重要だと述べた「DESC法」も次回「後編」で述べたいと思います。


アサーション

【文献】
平木典子(2009) 「改訂版 アサーション・トレーニング」 日本・精神技術研究所


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