
信仰、と云うほど大袈裟なものでは全くないが、僕の家には神棚がある。そして、神棚、と云うほど立派なものでも決してない。なにせ僕がハンドメイドで拵えたものだ。一応は朝には二礼二拍一礼で手を合わせている。云うまでもなく時々は忘れるのだが。
それはともかく、収められた御札が少々珍しいのではないかと思うので紹介してみたい。中央はもちろん 「天照皇大神宮」。これは当然である。

なんでも、関東を中心に東北や西側にも拡がった「狼信仰」と云うものが、この国には存在している。東京の武藏御嶽神社や同じく秩父の宝登山神社などが有名であるが、そうした神社では、狼を 「お犬様」 として祀っているのだ。人々は個人的に崇拝信仰する場合もあれば、それぞれの地域で 「講」 と呼ばれる集団を組織して、定期的に講員全員、ないしは代表者がその神社に参拝する (代参) 場合もある、と云ったものだ。まあ 「冨士講」 と同じで信仰の対象が違うだけとも云える。が、その対象が狼であるのが興味深い。
たとえば三峰神社は倭建命 (やまとたけるのみこと) が伊弉諾尊 (いざなぎのみこと) ・伊弉册尊 (いざなみのみこと) を祀ったのが創建とされるが、この東征の際に秩父の地を道案内をしたのが狼 (山犬) だったと云う。

まず、代参の前に行われる、山の神と御眷属への供えと同じ物を食べる「
こうした信仰の背景には次のような事情もある。その昔、山にまだ日本狼が生息していた頃、よく里には狼が出た。狼は、猪やら鹿やらの農作物の害獣を食する。それは山と農業にとって恩恵である。

そうした思いを受け継いできた人々の想いを、僕は尊いと思う。山を、自然を思い、畏れ、その振る舞いに驚きながら、ずっと大切に付き合って来たの人々の想い……。と云う訳で、僕の家には神棚がある。
